飯田線を旅すると決めた時
アドバイスを求めた知人から推薦されたのは
秘境駅「中井侍(なかいさむらい)駅」
なにもないところで
どうやって2時間を過ごしたらいいんだろう
…と思いながら列車に乗っていると
切符を買った
飯田線の車掌さん
「えっ、中井侍行かれるの?ここいいですよ」となぜか関西弁で話しかけてくれた

「2時間どうやって過ごせば?」というと
なんと散策コースを考えてくれ、次の「伊那小沢駅」まで山の稜線を歩くことを提案
しかも地図まで用意してくれた
なあ~んて親切
(ちなみに中部天竜駅で昼食調達の場所を教えてくれたのもこの車掌さん

)

予想はしていたものの、進めべき道は山の斜面に1本の細い道のみ
特に道しるべもなく

不安に思いながら、暗くて誰もいない坂道をひたすら上へ上へ
途中この道でいいの?と思えば、見つけた民家を頼る
森の中の一軒家は静かで人が住んでいるのだろうか?とこわごわインターフォンを押してみる
おばあちゃんに「この道をまっすぐ上に行けば中井侍の集落に出るよ」と言われほっ
実は山登りなど考えていなかったので、結構な上り坂に後悔さえ覚えた私

それでもどんどん上がっていくと
日差しが当たり少し開けた場所に

眼下には降り立った駅方面が見える
ここでまた
ひとりのおばあちゃん
「どこから来んさった?」とにこにこ笑顔のかわいい方
きっとひとりでこの山の中で暮らしているに違いない
人恋しさからだろうか?いろいろ聞いてきて引きとめているようにも感じた
柿を切ってくれ道中食べてと渡してくれた
振り返ると急な斜面の畑でひとり作業をしていた
その姿は
とてもいとおしかった

この辺りはお茶が有名で、いたるところ急斜面に茶畑を抱えた民家が見える
敷地内に大抵ご先祖のお墓があるのも興味深かった
何もない、自然の中の人の営み
道には名も知らむ花が咲き、赤とんぼが乱舞する
ゆっくりと時間が流れていく
山を登り切って舗装された道路に出てからはなだらかな道なりの歩行
ただ次の駅まではひたすら歩くのみ

途中
三十三所観音に出会った

せせり立つ大きな岩の中をくりぬいた感じで、いろいろな表情の仏様が祭られている

仏様の頭上には大きな文字が岩に刻まれて…
「中井侍 三十三体観世音菩薩像」
これはとても
素敵な出会いでした
木漏れ日の道を下っていくと

やがて青く静かな川面の天竜川が見えてきた

そこから少し歩いて、目的の「伊那小沢駅」へ
1時間半ほどの散策は
振り返れば
とても貴重な時間だったと思える
ただ
旅の道連れの友人
こんな旅とは思っていなかっただろう

内心むっとしながら口に出さすに我慢して付き合ってくれた
ほんと感謝

たぶんひとりであったなら
もっと、はちゃめちゃの旅になったに違いない
次は
薬膳料理を満喫した湯谷の宿をご紹介予定